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「あれから100年、朝鮮人等大虐殺事件とトランスジェンダー~福田村事件を鑑賞して~。」

2023年09月01日

これまでももちろん、毎年この季節になると小池都知事が関東大震災時に起こった朝鮮人等虐殺事件の犠牲者を追悼する会に対して追悼文を送らないことに憤りを感じ、その旨発信して来た。

彼女の歴史観をハッキリと表す不作為であり、それでもなお絶大な支持を得ているということは、都民の大多数もその歴史観を支持・容認しているということ。

絶望感に襲われるわけである。

が、今年ほどこの件の動向が気になることはなかった。なぜか。

関東大震災から100年が経つ、区切りの年だからではない。それは、昨今のトランスバッシング・トランスヘイトによるものだ。

私たちトランスジェンダーが女性用トイレやお風呂を利用すると性犯罪を犯したり、あるいは性犯罪を誘発するという、例のアレだ。

犯罪と属性を単純に結びつける、愚かで幼稚な言説であるが、LGBT理解増進法(私からすると差別増進法であるが)を阻止したい宗教右派の人々の尋常でないキャンペーンが功を奏したか、国会議員やまさかと思うような知識人・著名人までもが見事に踊らされていて驚愕した。

私自身がトランスジェンダー当事者でありその渦中にいたわけだが、この様子を眺めながらずっと頭に浮かんでいたのが、関東大震災の際の朝鮮人等大虐殺事件であった。

デマや無知・偏見・猜疑心に加え、それまで虐げる側だった者による復讐への恐怖心。

そうした複雑な背景が絡み合い、惨劇は起こされた。凶悪な人々によってではなく、「普通の」人々によって。

まさにトランスヘイト・トランスバッシングの状況そのものではないだろうか。私たちも、もしかしたら関東大震災の際の朝鮮人等の人々のように、近いうちに襲われるのではないか・殺されてしまうのではないか。本気で恐ろしかった。

女性トイレから出ていけ!女性風呂から出ていけ!日本から出ていけ!出て行かないなら死んでしまえ。

常にそう言われているようで、本当に恐ろしかった。

だから今年は、例年以上に9/1が気になっていた。

そして本日遂に当日を迎えたわけだが、直前に松野官房長官による政府内にそのような記録はないとの歴史改ざん主義的発言が飛び出すなど、日本の劣化を感じさせる状況だ。

加害行為を正当化するレイシスト団体の「追悼式」が、本来の追悼式が行われるのと同じ会場で開催されることが東京都により許可され、逆に、東京都立施設「東京都人権プラザ」の企画展で関東大震災の朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映が認められないという事件もあった。

いったいこの国はどこへ向かおうとしているのか。歴史と向き合わない国に未来はない。

軍事費倍増・武器輸出解禁など、もはやとどまるところを知らぬ軍国化が進む。

外国人を犯罪予備軍のように扱う入管法の改悪や、性的少数者(特にトランスジェンダー)を多数者側の安心・安全を脅かす存在として捉えるLGBT理解増進法という名の差別増進法が成立するなど、排外主義の傾向も強まっている。

また、女性支援団体への攻撃・嫌がらせが激しくなっており、女・子どもを男から逃すまいと離婚後共同親権導入が視野に入って来ているなど、家父長制回帰の傾向も見逃せない。

軍国主義、排外主義、家父長制は戦争への3点セット。

本日公開の映画「福田村事件」でも、そのことが読み取れて背筋が凍った。そこにはまさに今の日本の姿があった。

100年経っても変わっていない、否、悪化しているかも知れない我が日本。

巻き添えはごめんだ。自分自身が安心して暮らせる社会に、変えるしかない。

先のレイシストによる「追悼式」に対してもカウンターの人々が集結し集会を阻止するなど、希望もまだまだ存在する。

志を同じくする諸君、力を合わせてゆこう。

 

※水道橋博士が今作品で素晴らしい存在感を発揮なさっていて驚いた。れいわ新選組でご一緒させて頂いたというご縁を差し引いても、群を抜いていた。是非多くの皆様に劇場に足を運んで頂き、その雄姿をご堪能頂きたい※