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「バンクーバー・インクルーシヴ教育スタディツアー2/6日目~日系移民の歴史とともに~」

2023年04月04日

ツアー2日目、テーマは「日系移民の歴史とダイバーシティ」でした。

前回の1日目の報告ブログでも書いたように、カナダは先住民を迫害した歴史と向き合い、共生の未来に向けて歩みを進めています。

そうした社会で暮らす皆さんが主催しているのですから、インクルーシヴ教育を学ぶツアーに、カナダにおける日系移民の歴史を学ぶことが含まれるのも必然ですね。

恥ずかしながら、私はカナダに日本からの移民がいたことや、第2次世界大戦をきっかけに迫害された歴史を有することを知りませんでした。

最初に訪れたのは、バンクーバーのダウンタウンから車で30分ほどだったでしょうか、リッチモンドのスティーブストン。

現在もカナダ有数の漁港ですが、以前は鮭が大漁で缶詰工場が主要産業となり、19世紀後半から日本から漁師を中心に多くの移民がやってきたという歴史を有します。


(スティーブストンに限らず、ダウンタウンでも街中に桜が咲き誇っていました。参加者さんのお二人の姿があまりにも絵になっていたのでパチリ☆)

スティーブストン博物館とトラム

郵便局に併設されているスティーブストン博物館には日系移民の歴史に関する資料が展示されています。

日系移民の子孫であるMIMIさんがなんと彼女の第一言語ではない日本語でご案内くださいました。

ちいさなちいさな博物館でも車いす対応、さすがです!

日系移民が学校や病院などを建設して地域にも貢献し、

柔道・剣道・空手などを広めるべく道場まで建設し、現在も地元で愛されています。

残念ながら私は武道はたしなんでおりませんが、それでも胸が熱くなります。

こうして地域に溶け込んで生活をしていた日系移民も、1941年の真珠湾攻撃を契機として敵性外国人とされ、漁船・土地・建物などの財産を没収されて内陸部の収容所へ送られてしまった。

こちらは当時、収容所へ送られる際に利用された駅舎を再現したもの。いったいどのような思いで列車に乗せられたのか。

もう二度と、戦争を起こしてはいけないとカナダの地でも胸に誓いました。

ムラカミ・ハウス

そこから、缶詰工場が隆盛を誇っていたエリアを散策。

今は海岸沿いに遊歩道が整備されて人気スポットとなっているとのことで、お天気に恵まれたこともあってそれはそれは気持ちが良かったです。

日系漁師像にも胸を打たれます。

道中、「ムラカミ・ハウス」に立ち寄りました。スティーブストンでは男性はサーモン漁、女性は缶詰工場での過酷な労働に従事したそうですが、このムラカミ・ハウスはそんな日本人の中のひとり、村上音吉(むらかみ・おときち)さんとその家族が暮らした家や、ボートハウス(漁船づくりの作業場)などを見学できます。

 

昼食はそのボートハウス内で主催者さんが用意してくださいました。お食事をしながら、バンクーバーで働き始めてまだ間もないというMINAMIさんのお話に耳を傾けます。

リアルな現地生活をお話してくださり、日本人がただ一人の職場で働く中、大切なのは多様な人々への「理解と敬意」だと実感する日々だそうです。熱意溢れるお話で、海外に渡る日本人はいつの時代もパワフルなのであろうと感服しました。

本間小学校

お腹もいっぱいになったところで、お散歩をしながら次にお邪魔したのが「本間小学校」

日系移民のリーダー的存在だった本間留吉さんのお名前が付けられていますが、れっきとした地域の公立学校です。

ご覧の通り日本風なエッセンスが取り入れられており、長屋コミュニティのようにコミュニケーションが図られるような作りになっているそうです。レインボー横断歩道もいいですね~♡

ここで特筆すべきは、キャピラノ大学のユニバーサルトイレで感動した(報告ブログ第1弾にて)のと同じようにこんなボードが掲げられていたところです。

そうです、EVERYONE IS WELCOME HERE !

多様な背景を持つ児童・生徒一人一人が、このボードによって勇気づけられていることでしょう。

そして図書館や各教室入口にはこんなステッカーが貼られています。

THIS IS A SAFE PLACE  FOR LGBTQ PEOPLE。

泣けてきます。

廊下での掲示物もカラフルでポップ!

コチラはピンシャツ運動について子どもたちの思いがつづられています。

男の子がピンクのシャツを着ていてからかわれた出来事をきっかけに、誰だって好きな色の好きな服を着ていいんだよと広める運動が世界中に広まりましたね。その一環です♡

なにかと洒落てます。

本間小学校に限らず、BC州では学校に職員室がないそうです。先生の教室だから、それぞれの色が出る。センスが問われる⁉わけです。

ライトや飾りでリラックスした雰囲気が生まれています。先生も生徒もウェルカムで、日系カナディアンの子どもたちは嬉しそうに日本語で話しかけてきたり、通訳を買って出てくれたりして胸がポカポカして来ました。

高学年では「差別とは?」という授業の最中でした。小学生のうちから差別について学ぶ・・日本ではどうなっていますでしょうか。各グループで真剣に調べ物をしたり話し合いをしていて驚きました。

校長先生が質疑応答時間をたっぷりと設けて下さり、様々詳しくお話しくださいました。

担任教師がすべてを担う日本と違い、こちらではEducational Assistant(EA)、 Resource Teacher (障害児支援専門の先生)、行動コンサルタント、言語療法士、作業療法士などなど様々なメンバーが必要に応じたチームを編成し、教室でともに子どもたちを支えるというお話には感動しました。

確かにどの教室でも先生が何人かいらっしゃいました。手厚い!

1クラスの児童・生徒数も少なく、平均20人前後・・日本の半分程度で、更にサポートチームがいるわけですから百人力です。日本の児童生徒や教師が気の毒に思えてきます。

教室の中にリラックスペースがあったり、長い時間じっとしていられない子どもたちでも、底がボール状に不安定になっている椅子(名前がわからず(´ε`;))など様々な形状の椅子でゆらゆらと動きながら授業に参加している様子も多く見られましたね。

身体的な障がいを有する生徒さんが見られなかったように思っていたところ関連の質問が出て、現在重度障害の生徒はいないが、それはたまたまで、入学を希望する生徒が来れば法律で受け入れなくてはならないこともあり、適切なサポートチームが組まれるそうです。

国の政策として、基本的には皆が地域の学校に通えるのです。

そして単に放り込んで放ったらかしにするのではなく、最適なチームを組んで学びやコミュニケーションを支援する。
目指すべき教育の姿です。

バーンズちぐささん講演

感動を胸に学校を後にし、ダウンタウン近郊の福祉センターにてバーンズちぐささんの講演「カナダのインクルージョンを学ぼう!」を拝聴。

日本でカナダ人男性と結婚し、その後シングルマザーとなって自閉症のお子さんを育てて来られたのですが、元配偶者のお姉様のお声がけで手厚いサポートを受けられるカナダにやって来て、現地の制度に精通するようになり、サポートグループの代表を務めるまでになったパワフルなお方です。

具体的な支援制度や助成金額などの情報を惜しみなく提供して下さり、その手厚さに驚かされました。特に、カナダでは親が高齢になっても・親亡き後も、障害を持つ子供が安心して暮らせるよう応援してくれる制度があるという点は注目です。

日本では「親なきあと問題」というのは大きな課題として耳にする機会が多いですから。

代表的な制度が以下の2つ。

Registered Disability Saving Plan(RDSP)は、カナダの全ての州で統一された政府公認の障がい者のための投資制度。ハイリスクハイリターン型や元本保証に近い型など、経済状況やそれぞれの事情を考慮して様々なプランを選べる。非課税、家族以外でも積み立てられる、世帯収入によっては国から助成金が付加される、親自身の老後の資金にも出来る等々、日本の状況からすると夢のような制度です。

Represenntative Agreement(RA)は、BC州独自の制度で、成年後見制度のハードルを低くしたもの。ヘルスケア・パーソナルケア・法的手続きや日々の資金管理についての法的拘束力を有する文書で、親族でなく友人でも登録できるのが斬新!

実際にどれほど活用されているのか、課題としてはどのようなことがあるのかなど、今後学びを深めたいと思います。

こうして障がい者に対し手厚い支援を行う政府の姿勢が、障がい者に対する理解や敬意を醸成する・国民を啓蒙することになっているのではないかと感じました。

その証拠に、木村英子・船後靖彦・天畠大輔参院議員に対して誹謗中傷の言葉も数多く投げつけられる日本に対し、カナダではALS患者の国会議員がヒーローとして扱われているのだそうです。

インクルーシブな教育が、インクルーシブな社会を生み出している。

一朝一夕に実現されているのではなく、30年近い歳月をかけて国策として取り組んできた成果なのでしょう。

しかし諦める必要はありません。後から始める者の方が、お手本がある分スムーズに行く部分もあり、より良い制度を生み出すことも可能です。

興奮冷めやらぬ中、質疑応答などすべて終了したのはなんと夜の8時過ぎ(°д°)‼
そこからホテルに戻り、開いているお店が見つけられず、今夜はジャンクにA&W‼

気づけば牧草牛‼

あまりにも濃密な2日目。
モグモグしながらバタンキューでした。

3日目の報告もお楽しみに٩(ˊᗜˋ*)و