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「生活保護における扶養照会について~令和3年第1回定例会本会議一般質問ご報告2-1~」

2021年02月25日

皆さんこんばんは、新宿区議会議員のよだかれんです。

1週間ほどたってしまったのですが、2/19に行った本会議質問を2回に分けてご報告いたします。
先ずは1問目の「生活保護における扶養照会について」。お読み頂けたら幸いです( ´艸`)

よだかれん質問文

コロナ禍の経済的影響がじわじわと広がっています。年度末の3月には、契約期間が終了する有期雇用者が、雇止めに合う・寮の退室を求められるなど、大量の生活困窮者が生み出されるのではと懸念されています。

そんな中、多くの民間支援団体の方々が生活困窮者の救済に向けて大変なご尽力をしていらっしゃいます。支援の際、困窮している方に生活保護制度の利用を勧めると、「生活保護だけは受けたくない」と拒否される方が多く、対応に苦慮しているそうです。

緊急小口資金や総合支援資金などの特例貸付の相談窓口で働いている方からも、申請者から聞き取りをする中で、貸付を受けるよりも生活保護制度を利用した方がよいと思われる方にその旨助言をすると、「生活保護だけは受けたくない」と、同様に、拒否される方が非常に多いとお聞きしています。

拒否理由の代表的なものが、「扶養照会」です。扶養照会とは、福祉事務所が申請者の親族に援助が可能かどうかの問い合わせをおこなうことです。申請をためらわせる「扶養照会」ですが、厚生労働省が出している通知では、親族が高齢や未成年であったり、配偶者からの暴力がある場合、また明らかに交流が断絶している場合などは照会は不必要と示しています。

そこで伺います。

新宿区の昨年度と今年度における新規の生活保護申請世帯数・保護決定世帯数・扶養照会がなされた申請世帯件数・そのうち扶養照会によって実際に何かしらの援助がなされた件数とその割合をお示しください。具体的な援助の事例もお示しください。

また、区ではどのような基準で「扶養照会」を行っているのでしょうか。扶養照会は法律で定められているものではありません。あくまでも、本人が同意し、かつ、扶養の可能性が高い場合のみ照会すべきと考えますがいかがでしょうか。

次に、扶養照会と虐待事例についてです。

現在、各自治体に対する調査により、扶養照会は生活保護申請のハードルを上げるだけで、困窮者への支援を高める効果は生み出していないことが判明しています。例えば足立区では、2019年度の生活保護新規申請件数は2,275件でしたが、そのうち扶養照会によって実際の扶養に結びついたのはわずか7件(0.3%)だそうです。

「扶養照会」に要した職員の時間や労力、そして費用が得られた支援に対して見合っているとは思えません。扶養照会は職員を疲弊させ、保護を遅らせ、親族関係を悪化させ、更には申請者を危険な目に合わせてしまう可能性もあります。危険な目に合わせてしまう事例として、他自治体のケースではありますが、申請者がDV被害者であるにもかかわらず加害配偶者に照会が行き、住所が知られ、転居を余儀なくされた方がいらっしゃいます。逆のケースとして、虐待をしていた親が生活保護の申請をし、虐待されていた子どもに照会が行ってしまったという事例もあります。

新宿区の窓口では、こうした事が起こらないような対策が取られていたり、そのような事例があり得ることを想定して扶養照会の適否を判断していますでしょうか。

次に扶養義務の範囲についてです。

諸外国と比べ、民法上の扶養義務が広すぎるとの支援者からの指摘もあります。扶養義務対象が配偶者と未成熟の子にとどまる国が多いのに対し、日本ではさらに、兄弟姉妹、場合によっては3親等内の親族が含まれます。3親等というと、叔父や叔母、甥や姪などです。

3親等内の親族に対する扶養義務に関しては、家庭裁判所が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を負うものとされています。よって、福祉事務所の判断のみで扶養義務の設定をするのは不適切であると考えます。

区では、実際に3親等内の親族にまで扶養照会を行うケースはあるのでしょうか。

次に、区HPについてです。

区のHPでは「生活保護を受けるには」というページを設け、制度を利用するために必要な、(1)能力の活用(2)資産の活用(3)他制度の活用という3つの努力を例示し、加えて、「上記のほか、親子、兄弟など扶養義務者から生活に支障がない範囲内で、できる限りの援助をしてもらうこととされています。」と別枠で記載をしています。

ページの冒頭において「生活保護の申請は国民の権利です。ためらわずにご相談ください」と記載をしながら、申請希望者をためらわせる記載になっていないでしょうか。真にためらうことなく相談できるよう、この扶養照会についての記載を削除するか、表現を変更してはいかがでしょうか。例えば、「あなたが事前に承諾し、かつ、明らかに扶養が期待される場合のみ、親族に連絡をさせて頂きます。」などとするのはいかがでしょうか。

次に、職員のおかれている環境についてです。

担当課の人員は十分に足りているのでしょうか。生活保護に関する担当職員であるケースワーカーの1人当たりの担当世帯は国の基準で1人当たり80世帯と定められています。新宿区におけるケースワーカーの平均担当世帯数と、多い方ではどれくらいの世帯を担当しているか、お示しください。

今後更なる生活困窮者の増加が予想されますので、基準を上回っている場合には、1人当たり80世帯以下となるよう、ケースワーカーの早急な増員を図るべきだと思いますがいかがでしょうか。

また、困難な事情を抱えるたくさんの相談者に向き合っている、相談員やケースワーカーの精神的なケアを十分に行って頂きたいと思いますがいかがでしょうか。

次に、生活保護に関わる職員の皆さんの、人数と、雇用形態ごとの内訳をお示しください。

激務に当たられている職員が、適正な処遇を受けているのか気になるところです。10年ほど前、私は職を求め、ハローワークに通っていました。その際、窓口職員の多くが非正規職員であることを知りました。国民に仕事を紹介する立場の方が、雇止めに怯えながら、3年ごとに公募試験を受け直さなければいけないという不安定な労働環境にあるというのは、ブラックジョークだと思いました。生活保護に関わる職員の労働環境が不安定であっては、相談者に寄り添った対応をするのは難しいと思いますので、確認させて頂きます。

以上、区のご所見を伺います。

区長答弁

よだ議員のご質問にお答えします。

生活保護における扶養照会についてのお尋ねです。
はじめに、生活保護申請世帯数等についてです。

区における新規の生活保護申請世帯数は、令和元年度は1,428件、令和2年度は12月末時点で1,120件です。また、保護決定世帯数は、令和元年度は1,373件、令和2年度は12月末時点で1,070件となっています。

次に、扶養照会を行うにあたっての区の基準についてです。区では、「扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けない」など、扶養が保護の要件であるかのような誤解を与えることが無いよう、適切に対応しています。保護の申請があった際は、要件を満たしていれば、保護の決定を優先して行っています。扶養照会は保護の決定後、被保護者と扶養義務者の関係性を考慮した上で、適否について十分に検討を行い、事前に被保護者の承諾を得られた場合に実施しています。

このように、区では、申請段階において扶養照会を実施していないことから、生活保護申請世帯に対する扶養照会の件数や割合、またその事例などはありません。

次に、扶養照会により、被保護者等を危険な目にあわせることが無いような対策及び、そうした事例を踏まえた扶養照会の適否の判断についてです。

扶養照会の実施にあたっては、被保護者及び扶養義務者の双方に不安を与えることが無いよう、配慮することが重要です。そこで、扶養照会をする際には、事前に被保護者の承諾を得るとともに、扶養義務者には、個々の状況に応じて、内容に留意しながら、慎重に対応しています。

次に、3親等内の親族に対する扶養照会の実施についてです。

扶養義務者が明らかに扶養能力があると推測される等の事情がある場合には、3親等内の親族に対し、扶養照会を実施しています。

現在、扶養照会のあり方について、厚生労働省において、改めて検討を行っていると聞いています。今後の動向を注視しながら、支援を必要としている方が、ためらうことなく、相談や申請が行えるよう、区ホームページを変更していきます。

次に、生活保護を担当する職員についてのお尋ねです。

令和3年2月1日時点で、ケースワーカー一人あたりの平均担当世帯数は約100世帯となっています。また、日々変動はあるものの、多いケースワーカーでは120世帯程度を担当しています。

ケースワーカーの配置については、23区の平均担当世帯数を上回らないように行っていますが、一人あたりの担当世帯数が、国の基準である80世帯を超えていることから、就労が可能な被保護者への就労支援業務を事業者へ委託したり、会計年度任用職員に被保護者の年金加入状況調査や、通院同行を行わせたりするなど、ケースワーカーの業務負担の軽減に努めています。

次に、相談員やケースワーカーの精神的なケアについてです。

職員が一人で業務を抱え込むことが無いよう、管理職や係長級職員が日常的に声掛けを行うとともに、定期的に開催する係会で事例を出し合うなど、組織的に対応しています。また、健康管理室のカウンセリングにもつないでいます。

次に、生活保護に関わる職員の人数と雇用形態ごとの内訳についてです。

生活保護を所管する生活福祉課及び保護担当課には、令和2年4月1日時点で、197人の職員を配置しており、常勤職員が154人、会計年度任用職員が43人となっています。

振り返り

昨今話題になっている扶養照会についての質問ですね。「一般社団法人つくろいファンド」が運用の見直しを求めて署名を集めたところ、なんと35806人分の‼署名が集まり、国へ提出されました。実は質問前に、つくろい関係者から、新宿区は扶養照会については悪い運用はされていないという情報は頂いていました。

しかし、各地の自治体議員がそれぞれの議会で取り上げることで、扶養照会の問題点を可視化し、三方悪し(困窮者にも・親族にも・職員にも)の扶養照会を撤廃する後押しになると考え、敢えて取り上げました。

そのことによって、

・扶養照会によりDVや虐待の被害者に危険が及ぶ可能性について
・家庭裁判所の判断無しに福祉事務所の判断のみで、3親等内の親族へ扶養照会をすることの問題点について

議会の場で指摘することが出来ました。
さらに、生活保護にかかわる職員の置かれている立場についても言及できました。

国の基準では80世帯とされているケースワーカーの単層世帯数ですが、新宿区では平均で100世帯を超えており、多い方だと130世帯を担当していることが分かりました。23区平均が92.74世帯なのでそれを超えないよう目指しているとのことでしたが、それでは職員にとって過酷な状況は変わりません。

これからも平均担当世帯数が80世帯以下となるよう、しつこく訴えていきたいと思います。職員がのびのびと働ける状態でなければ、困っている人々に真に寄り添った対応は出来ないと思います。

本日(2/25)の予算特別委員会で、生活保護にかかわる課において、心が疲れて休職している職員が1名いらっしゃることが判明しました。年単位では数名の方がお休みするという事で、他自治体の例でお聞きしていた人数よりも少ないのは救いでしたが、たとえ1名でも大変な問題です。

ある自治体では、生活保護にかかわる課は区役所の中でも3K(キツい、汚い、危険)と言われ、最も異動したくない職場のひとつなのだそうです。やる気に満ちて入庁した若手や、昇進してきた係長級職員も、日々精神をすり減らし、異動することばかり考えるようになるともお聞きしました。

コロナ対応をしている保健所を始め、どの部署も大変なのは同じでしょうし、新宿区役所では先述のような評価ではないかも知れませんが、人員や予算でバックアップするのはもちろん、何よりも、区全体(議員も含め)が生活保護に関る職員の労働環境を知り・敬意を表し・評価することが求められているように感じます。

新宿区のすべての職員がのびのびと才能を発揮できる環境を作ることが、区民の利益・幸せに繋がります。もっともっと、職員の皆さんとお近づきになり、皆さんの生の声に触れられる機会を積極的に作ってゆきたいと思います。

質問第2は、また後日(*゚▽゚)